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統合メモリー

AIの需要拡大に伴い、急速に注目を浴びているCXL対応メモリーについて、求められる背景、テクノロジー、メリットなどを紹介するシリーズ「AIインフラにおける『縁の下の力持ち』 CXL」を今回から4回にわたって連載します。
CXL対応メモリーは、テクノロジーの斬新さだけでなく、ビジネス視点でも大きなメリットをもたらします。第1回目は、市場予測から、テクノロジー上のメリットを簡単に紹介します。
世界最大級のIT調査企業ガートナーは、「2028年までに新規出荷されるサーバーの過半数がCXL対応メモリーを搭載するようになる」と予測しています。これは単なる技術トレンドではなく、ITインフラ戦略に直結する重大な転換点です。現在、私たちが使っているサーバーのあり方が、あと数年で根本から変わろうとしています。
この変化はAI需要の爆発的な拡大と、従来のメモリーアーキテクチャの限界が背景にあります。(「ガートナー IT インフラストラクチャ、オペレーション&クラウド戦略コンファレンス」での講演内容より ※出展:EnterpriseZine https://enterprisezine.jp/article/detail/19027)
なぜ、多くの企業が「CXL」という新しい技術に注目しているのでしょうか?
その背景には、ChatGPTに代表される「生成AI」の爆発的な普及と、それに伴う深刻な「リソース不足」という課題があります。リソース不足の中核の1つが、メモリーです。これまで、ITインフラの進化はCPU(計算処理)のスピードアップが主役でしたが、これからは「メモリー」が課題を解決する鍵になります。
この課題に対する有力な解決策として注目されているのが、CXLです。その理由を理解するには、まず「AI時代のサーバーが直面している根本的な課題」を知る必要があります。
ChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、数百億〜数兆個のパラメーターを持ちます。これらを処理するには、数十〜数百テラバイトのメモリーが必要になることもあります。
しかし、従来のサーバーでは、
そのため、サーバーを複数台構成し、分割して処理することになりますが、通信のオーバーヘッドで性能が低下し、コストも増大するという悪循環に陥ります。
コンピューターには大きく分けて「処理をする部分(CPU・GPU)」と「データを一時的に覚えておく部分(メモリー)」があります。例えるなら、CPU・GPUは「シェフ」、メモリーは「調理台」です。高性能なシェフ(GPU)を100人雇っても、調理台(メモリー)が狭ければ料理は遅くなります。つまり、AIが複雑な処理をするとき、調理台が狭すぎてシェフが本来の力を発揮できない状態になっています。つまり、演算能力だけ上げてもメモリーが追い付かないと性能は発揮できないのです。
これを、「メモリーの壁」ということがあります。
メモリーの壁は、単なる技術課題であるだけでなく、機能を実現するためのシステム費用が想定以上に膨らみ、費用対効果が出にくくなるなど、企業におけるビジネス上のリスクも生み出します。
CXL(Compute Express Link)は、Intel、AMD、Arm、NVIDIA、Microsoft、Google、ペンギンソリューションズなどが参画するCXL Consortiumが共同で策定した、業界標準の次世代の高速・低遅延を実現する接続規格で、次世代のデータセンターや AI インフラのパフォーマンスを劇的に向上させる技術です。
1. メモリープーリング
複数のサーバーや GPU のメモリーを「一つの大きなプール(貯蔵庫)」として統合し、必要なときに必要な分だけ柔軟に割り当てる仕組みです。従来のサーバー環境では、各サーバーのメモリーは「専用」でした。例えば、サーバーAのメモリーが50%余っていて、サーバーBのメモリーが不足していても、融通ができませんでした。CXLのメモリープーリングでは、この壁がなくなります。10台のサーバーのメモリーを「共有プール」として管理し、AIワークロードの重さに応じて動的に割り当てられます。

2. 低遅延・高帯域幅の接続
CXLは、物理的には PCI Express (PCIe) 5.0/6.0 の仕組みを利用していますが、中身の「データの送り方」がより高度になり、「応答速度(レイテンシー)」が大幅に改善されています。データのやり取りがほぼリアルタイムで行われるため、AI推論タスクでも高いパフォーマンスを維持できます。
3. キャッシュ・コヒーレンシー(データの整合性保証)
複数のCPU・GPUが同じメモリープールにアクセスしても、データの矛盾が起きないよう自動的に整合性を保つ仕組みが内蔵されています。大規模な分散AI処理を行っている場合でも、信頼性が高い環境を構築できます。
1. サーバー台数の削減
メモリープーリングにより、従来はメモリー容量確保のために複数台必要だったサーバーを少ない台数で処理できるようになります。ハードウェア購入費・保守費の大幅削減が期待できます。
2. メモリーの有効活用
従来は「念のため多めに搭載」していたメモリーが不要になります。必要な分だけ動的に割り当てるため、メモリーの調達コストを最適化できます。
3. 電力・冷却コストの削減
サーバー台数の削減と効率的なリソース活用により、データセンターの消費電力と冷却コストを削減できます。
ガートナーが予測するように、CXLは「来るかもしれない技術」ではなく「来ることが確定している技術」です。AIインフラというと、GPUやCPUの性能が注目されがちですが、CXLは、AIインフラにおける「縁の下の力持ち」として活躍が期待されます。
クラウドプロバイダーやハイパースケーラーでは先行導入が始まっており、今後、本格的な普及が見込まれます。企業のIT担当者・経営層にとって、今CXLを「知っておく」ことは、将来のインフラ投資判断において非常に重要な意味を持ちます。
「メモリー不足に備えて、あらかじめ全サーバーに最大容量のメモリーを積んでおく」という無駄な買い溜めが不要になります。全体のメモリー利用効率が上がるため、購入するメモリーの総量を大幅に削減できる可能性があります。
システム投資やAI戦略を検討する際、「CXL対応」をキーワードに計画に盛り込んでみてはいかがでしょうか。それは、単なる話題作りではなく、企業のAI競争力を根底から支える賢い投資になるはずです。

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