日本に復活のチャンスはある? そのシンプルな答えは

「日本に復活のチャンスはあるのか?」という小難しい書き出しをしてみましょう。シンプルに答えると“YES”です。

30年間も経済成長をせずに、今年に入ってもインフレに負けて実質賃金がマイナス成長を続けている日本が?少子高齢化が想定以上に早く進み、年間の出生数が70万人を切った日本が?国の借金である国債発行残高が国内総生産の200%以上ある日本が?7人に1人の子供が貧困状態にありOECDで最低の日本が?ジャンダーギャップ指数が148か国中118位の日本が?食料自給率がカロリーベースで38%しかない日本が?

冒頭の質問に対してネガティブな要素を列挙すればきりがありません。これらはそれぞれが重たい事実です。それでも日本に復活のチャンスがあると考える根拠は何でしょう。

まず、日本に経済成長の余地はないという説には合意できません。これから世界的にインフレ基調が続くなかで、日本だけ経済成長をせずに国のサービスや社会保障を継続することは困難です。そして、その経済成長をする上で最も重要な産業政策はどのようなものでしょう。私は、製造業とエネルギー産業であると考えます。もちろんサービス業や農業も重要ですが、これらは牽引役というよりはサポート役と考えます。紙面の都合上ここでは産業政策の中で、製造業を中心に話を進めます。

その鍵は製造業

地政学の観点で、経済ブロック化はますます進展すると想定されます。欧米と中国・ロシアのデカップリングです。米国と中国の覇権争いは、それぞれの現政権が終われば収束するということはなく、中長期にわたるものだと想定されます。中国は日本にとって最大の貿易相手ですので、日本は欧米ブロックのメンバーでありながら、中国とも一定量の貿易を継続するのでしょう。但し、難しいのはブロック化が進展した場合に、この一定量の貿易を維持することができるかどうかです。逆に、ブロック化が極端に進展すると、欧米が中国抜きに製造サプライチェーンを構築することになりますので、日本にはそのぶん別な意味で大きな期待もされることになります。

自動車や半導体を例にあげて考えてみましょう。現在、電気自動車つまりEVの売上の最も大きな企業は中国のBYDです。そして、それに米国のTESLAが続いています。中国ではEV関連企業が雨後の竹の子のごとく作られては消滅し、現在残っている企業はかなりの競合力があります。EV関連企業のクラスターとしては世界一であることは間違いありません。EV市場が分断されますと、欧州や日本のEV車にチャンスが回ってきます。但し、現状をみるとそれ以前に米国の政策でEV車への補助金が削減され、短期的にガソリン車やハイブリッド車が優位になるため、分断された市場でそれぞれに自動車の生態系が発展する可能性もあります。

世界的なAI開発競争の中で、最先端の半導体(GPU)を中国には輸出禁止にする施策も取られています。一部の国を経由して迂回輸出されているという言説もありますが、ボリュームは限定されているでしょう。中国では2方面の対策が見受けられます。ひとつはDeepSeekのように効率的なソフトウェアの開発を進めて、GPUを大規模に必要としない環境でAIの機能を利用できるようにすること。そして、ふたつめには自国内で独自の半導体を開発することです。これらの対策の先には、やはり欧米と中国で別々な生態系のAIインフラストラクチュアが構築される可能性があります。サービスのインフラストラクチュアが欧米と中国で異なる生態系であるというのは、既にWebサービスやSNSの発展経過でも経験しています。

日本は電子部品を多く中国に輸出しています。携帯電話を始めとする電子機器の内部で使用されるものです。また、半導体製造装置の輸出量も多大なものです。さらには、日本の自動車、特に高級車は中国で人気があります。それ以外に、プラスチックや非鉄金属などの素材の輸出もボリュームがあります。中国では多くの産業で自立走行を始めていますが、いまでも中国が日本からの輸入を必要とする分野、ここに将来にむけて維持し発展させるべき日本の製造業の重点分野があると考えます。また、それに加えてロボティックスやバイオテクノロジーも日本には基礎力があり将来性のある分野です。

ペンギンソリューションズが確信する日本の復活

経済を成長軌道に戻し、世界の中で日本が重要な役割を果たすということが「復活」であるとするならば、そのチャンスは大いにあると考えます。そのためには、冒頭のネガティブ項目のリストを改善することが必要になります。またその上で、産業政策(飯のタネ)を構築していくことが重要です。ペンギンソリューションズはストラタステクノロジーズ時代に、日本の多くのミッションクリティカルな業務に無停止サーバーを提供してまいりました。金融のカード決済業務、与信情報の管理、自動車や半導体の製造ライン、鉄鋼業や化学プラントの製造プロセス、鉄道の運行や信号管理、高速道路の決済、放送業務のディジタルコンテンツ管理等。これらの中で、日本の復活に資する分野ではこれまで以上に貢献できるようにしたいと考えます。そして、AIのインフラストラクチュアをエッジからデータセンター・クラウドまで提供することで、無停止型に加えて新たな価値を加えて、これまで以上に日本の各種産業を支援し続けます。今秋冬に発表される製品ロードマップにも是非ご期待ください。

さて、今回で私のブログとしては最終号になります。これまでの在任期間で40回を超える回数のブログを掲載しましたが、その一部だけでもお付き合いいただいた皆様に感謝申し上げます。また、新体制のペンギンソリューションズをこれまでに変わらずご愛顧いただけるようお願いします。

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